Inari One

イナリワン
鹿毛 牡 1984年5月7日生
父 ミルジョージ 母 テイトヤシマ 母父 Larkspur
競走成績 25戦12勝
1987年 東京王冠賞 (南関東G1) 1着
1988年 東京大賞典 (南関東G1) 1着
1989年 天皇賞・春 (GT) 1着
1989年 宝塚記念 (GT) 1着
1989年 有馬記念 (GT) 1着
 中央での競走成績はGTのみ3勝。以上!…
 いかにも愛情がなさげなコメントですね…管理人はイナリワンが大キライ…な訳ありません!それどころかイナリワンを語り出したら多分止まらないと思います。だから誰もが知ってる競走成績なんてこれで十分だろってことです。
 イナリワンとの出会いは大井競馬場。トゥインクルレースがまだ始まって2年目くらいではなかっただろうか?当時は現在のように晩春〜初冬まで殆どナイターなんて状態ではなく夏のホンの3ヶ月くらいの開催だけであった。今のL-Wingみたいな立派なスタンドもターフビジョンなんてモノもなく飲み屋と食堂が入ったボロいスタンドと枠連と単勝オッズが一目で見られる着順掲示板しかなかった。勿論カップルでの来場なんてのはまだ少なく、赤鉛筆を耳に挿した親父達が主流なのはヨソの地方競馬場と何も変わらず、ネクタイを締めたサラリーマンが数名で固まりワイワイやっているのだけがちょっと違う光景であった。初めて見るカクテル光線の中を走る馬達がヤケに綺麗に見えたのがとても印象的である。管理人がイナリワンを初めて見たレースは調べてみると彼の5戦目に当たるりんどう特別というレースのようだ。出馬表に全く負けていない馬の存在を見掛け、当たり前のように勝利した馬の印象以上にその名前がヤケに滑稽で一発で覚えてしまった記憶の方が鮮明で、帰路における友人達との会話でもその名前がギャグ代わりに飛び交い電車の中は周りの迷惑も顧みない大爆笑の渦…全くもって若気の至りである。
 その3ヶ月後、牝馬三冠に王手をかけたマックスビューティ一色に染まったスポーツ新聞競馬欄の片隅にイナリワンが東京王冠賞という南関東三冠レースの一つを無敗のまま手にしたという小さな記事を見掛けた。イナリワンのライバルと言うと当然平成3強を形成したオグリキャップ、スーパークリークの名が挙がるだろうが、その前の大井時代にもチャンピオンスターという同年のライバルがおり、それを撃破してのタイトルであった。イナリワンは暮れの東京湾カップを制し4歳時を無敗のまま終えることになる。
 明けて5歳のイナリワンは気性難丸出しで全く勝てない日々が続くことになる。いや、ここは敢えて言い方を変えよう。イナリワンはここからつまらないレースに見向きもせず「肝心なレースしか勝たなくなる」のである。後に中央入りした2頭、的場文男のシナノジョージや堀千亜樹のイーグルシャトーなどにもアッサリ先着を許す。しかし押さえるべき大井競馬のグランプリ・東京大賞典にはしっかりと勝利し、この後中央入りする。後は冒頭の通りである。
 管理人は馬券でもイナリワンには世話になっている。有馬記念でイナリワン‐スーパークリークの一点勝負をして見事にン十万を手にした興奮は忘れ得ない。後に川崎競馬場などで何度となくこれを超える金額を手にしたこともあるがこれほど馬券で興奮したことはない。
 さて現在のイナリワンだが初年度に中央で活躍したシグナスヒーローや父と同じ東京王冠賞を制したツキフクオー、そして同じく大井で活躍したイナリコンコルドなどを出すも種付け数的には決して恵まれたとはいえない繁殖生活であり、2004年に種牡馬生活を終える。
 晩年を過ごす地になったのは三石にある前川ファーム。2004年に訪ねたときに主の前川さんはイナリワンのことを全く知らなかったそうである。最初はただ訪ねてくる人が多いなということだったらしいがその内にファンからイナリワンのことを教わり今では恐らくイナリの一番のファンなんだろうなというくらいこの馬を可愛がっている。またイナリワンを訪ねてくるファンを非常に大切にする方で、必ず別の場所にあるであろうメインとなる仕事場から放牧地に駆けつけて来てイナリワンをファンの傍に呼び寄せてくれるのである。2006年の訪問ではこの馬の父であるミルジョージの消息まで語ってくれました。そしてコイツは絶対手放さないと宣言しています。前川ファームに訪れる時はスケジュールをキッチリ立てずにある程度時間の余裕を見ておくと前川さんから面白い話が聞けると思います。そんな前川さんと北海道の空と大地がイナリワンを若返らせ、気性難で武豊をしてただ一言「怖い」と言わさしめたとは思えない従順な姿で余生を送る上で不可欠なものだと言えるでしょう。イナリワン!そして前川さん!また遊びに行きます!(2006/12/21)
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 あれだけイナリワンを可愛がっていた前川さんがイナリワンを手放したようです。イナリワンがどうのよりも高齢の前川さんにとってしんどかったのでしょうか?イナリワンは現在同じ三石のポニーファームに移動しました。(2007/1/4)
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 その後のイナリワンは北海道北広島市を経て現在は個人所有になり茨城県高萩市にあるワンダーファームで繋養されています。「イナリワンと暮らせて幸せ」と言うほど馬好きの新オーナーさんに引き取られたようで(2010/7茨城新聞より)、26歳と既に晩節を迎えたイナリワンにとって恐らく最後となろう安住の地でも幸せな余生が待っていることでしょう。面会もどうやら可能なようです。2010年に相次ぎこの世を去った一歳下のライバル達の分まで長生きして欲しいのは、あの平成3強を知る全てのファンの願いです…
現況(2010/9現在):BTC助成対象功労馬(茨城・ワンダーファーム)

2010/9/12

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